第3回 一括発注と分離発注のメリットとデメリット


一括発注とは、お客様(施主様)が、窓口となる内装工事業者に工事やデザイン・設計の全てを一括して発注し、仕事を請け負った業者が各下請け業者をまとめて手配する発注方式です。

他方、分離発注とは、お客様がそれぞれの業者を分離して発注する方式です。分離の仕方は様々ですが、店舗の内装工事であれば内装工事業者、デザイン・設計事務所、厨房機器メーカーを分離して発注することが多いかと思います。

以下ではこの一括発注と分離発注のメリットとデメリットについてわかりやすく説明したいと思います。

なお、分離発注は工事の規模などによっても変わることがあるので、今回は一般的な飲食店を開業するにあたっての分離発注を想定して説明したいと思います。

一括発注

まずは一括発注のメリットとデメリットについて説明します。

メリット

まず1つ目のメリットは「責任の所在が明確になる」ことがあげられます。

元請け業者を1つ決めて、その業者が工事・設計・デザインを請け負い、各業者を手配するということになれば、例えば工事に何かしらの問題があっても基本的には元請け業者が責任を負うことになります。

2つ目のメリットは「連絡の窓口が1か所になる」ことがあげられます。

前述のように、一括発注であれば元請け業者が各業者を全て手配することになるので、窓口は元請け業者のみとなります。何か変更や問題があっても、元請け業者の担当者に連絡すれば済むということになります。

3つ目のメリットは「打ち合わせ回数が少なくなる」ことがあげられます。

2つ目のメリットと同様に、元請け業者の担当者とだけ打ち合わせすれば足りるので、様々な業者と打ち合わせする手間が省けます。その代わり元請け業者があっちこっちの業者と打ち合わせすることになりますが、業者はプロなのでそのあたりはあまり負担にならないかと思います。

デメリット

1つ目のデメリットは「費用が高くなる」ことがあげられます。

単純に、元請け業者がすべて手配するということになれば、元請け業者が取る利益分も見積書に乗っかってくるので、その分費用は膨らみます。

2つ目のデメリットは「お客様が元請け業者に伝えた意図が下請け会社に伝わらないおそれがある」ことがあげられます。

元請け業者の内装工事業者はプロなので、このようなことはあまり起きないかと思いますが、絶対に起こらないとは言えません。

このようなことを回避するためにも、全てを内装工事業者に任せるのではなく、お客様もわかる範囲で図面のチェックを行うことも重要かと思います。

分離発注

次に分離発注のメリット・デメリットについて説明します。

メリット

1つ目のメリットは「費用が安くなる」ことがあげられます。

業者を分けて発注する分、元請け業者の利益が乗っかってこないので、その分費用は安くなります。

2つ目のメリットは「分離発注先に打ち合わせの意図が伝わりやすい」ことがあげられます。

複数の業者との打ち合わせをする苦労をいとわなければ、お客様の工事やデザインに関する意図が業者にダイレクトに伝わるので、大きなメリットになるでしょう。

デメリット

1つ目のデメリットは「責任の所在があいまいになってしまう」ことがあげられ、これは分離発注最大のデメリットともいえるでしょう。

例えば、設置したエアコンが引き渡し後に動かなくなったとします。この場合、考えられる原因は2つです。1つはエアコン自体の不具合、もう1つは電気工事に問題がある、です。一括発注であれば責任は元請け業者一択ですが、分離発注の場合、上記2つの可能性を調べなければ責任の所在がハッキリしません。このようなケースではほとんどの場合、お客様がエアコン業者と電気屋さんを手配して調べさせることになります。そして、空振りに終わった業者の費用はお客様が負担することになってしまいます。

少し理不尽かと思われるかもしれませんが、職人をタダで動かすというのは大変失礼な行為なので、このような事態が起こってしまいます。

2つ目のデメリットは「分離発注された業者間のコミュニケーションに不安がある」です。

元請け業者がいれば、言い方は悪いですが、下請け業者は元請け業者に管理監督される立場にあります。

これが分離発注となると各業者は横並びの関係になるので、現実的な話、現場でバッティングした職人同士がケンカを始めるということもなくはないです。

終わりに

今回は一括発注と分離発注のメリットとデメリットについて説明しました。

経験的には、飲食店の工事であれば内装工事・デザイン・設計を全て内装工事業者が請け負う一括発注が多いと感じます。もともと住宅建築でも棟梁がすべてを一括して請け負う方式が採用されていた歴史があり、現在の大規模工事もゼネコンが一括して受注することが多く、飲食店の工事でも例にもれず一括発注が採用されることが多いです。

ぜひ上記の一括発注と分離発注についてのメリットとデメリットを参考に、発注方式を選んでみてください。個人的には一括発注の方がお客様も内装工事業者も安心して打ち合わせや工事を進めることができるかと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。


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