飲食店を開業するにあたり、もともと飲食店があった物件を借りる人はとても多いです。新築で建てるよりも、改装した方が初期費用を抑えられるからです。
ですが、その場所に以前あった店舗が閉店したという事実を忘れてはいけません。つまり、物件自体に何らかの原因があって閉店せざるを得なかった、ということもあり得るのです。
今回は、飲食店を開業しようとする場合の、入居物件の選び方について10個のポイントを説明したいと思います。これを読めば、入居物件の選び方の大枠を理解することができます。
是非、現場で各ポイントをメモしながら物件選びをしてみてください。
Contents
1. 重飲食か軽飲食か
物件によっては、貸主が営業する業態を限定している場合があり、重飲食(※1)不可のものもあります。物件を購入する際に、不動産屋の営業担当の方に自分がどのような業態の飲食店を開業したいかをしっかりと伝えましょう。
※重飲食:調理に伴い、大掛かりな給排水、給排気設備を要する業態のこと。
2. 賃料
賃料は総額ではなく、坪単価で比較しましょう。1坪は約3.3平米です。
例えば、物件AとBがあり、両方ともが家賃20万円/月だとします。
Aの面積が20坪だとすると、Aの坪単価は1万円、
Bの面積が10坪だとすると、Bの坪単価は2万円となるので、
家賃は同じなのに坪単価で倍違うことになります。
基本的には良い立地にあるほど坪単価は高くなるので、坪単価と立地とのバランスをよく見極めて物件を選びましょう。
3. 厨房の面積比率・必要幅
居抜き物件であれば、基本的には厨房区画はそのまま利用することになります。厨房区画は床を防水する必要があるからです。
厨房区画の必要な大きさは店内全体の3割ほどと言われています。
ですが、最近ではオート調理が可能な厨房機器を各種メーカーが出していることで調理の効率が上がりました。そのことにより、厨房区画をより小さくすることが実現できるようになり、より多くの客席数を確保するために厨房区画をできるだけ小さくする傾向があります。
自分がその物件に入った場合に、必要な厨房機器を並べられそうか、必要な通路幅を確保できそうかをしっかりと確認しましょう。
4. 上階・周辺に住宅があるか
上階・周辺の住宅に、排気設備からでる臭気がまわってしまうとクレームのもとになってしまいます。
臭気を上に逃すのか、外へ逃すのか、物件を選ぶ際にイメージしておきましょう。
5. 下の階があるか
厨房の防水が切れて下の階に漏水してしまうという話は少なくありません。
上階の物件を借りる場合には、防水工事の費用を多めに見ておいて、グレードの高い防水工事ができるように予算を見ておくのがいいでしょう。
直下の店舗が高級アパレルショップだったりすると損害賠償額も非常に高いものとなってしまいます。
6. 設備
既存の設備を上手く利用すれば、工事の初期費用を大幅にカットできます。
排水管、給水管、ガス管、電気の分電盤、壁の給排気の開口部分はしっかりと写真を撮っておいて、施工業者に見せてあげると打ち合わせをする際にとても便利です。
7. 看板の設置予定
看板はデザインしたものを自由に設置することができるとは限りません。市区町村の条例によっては、原色の使用禁止や大きさの制限があったりします。
不動産屋に確認してもいいですが、各地方自治体のホームページに記載があることが多いので、直接聞いてみた方が早いかもしれません。
8. 前面道路の幅と交通量
前面道路とは物件に面している道路のことです。これがあまりにも狭いと工事の際にトラックをつけることができないといったことも起こりうるので、写真とともに道路幅を測っておくとよいでしょう。工事業者にそれを見せれば大丈夫かどうかをすぐに判断してくれます。
9. 大通りからの視認性
集客を得るためには人通りの多いところからどのように見えるかがとても大事です。あまりにも視認性が悪い場合には、離れた大通りに大きな看板を設置する手もありますが、その分費用がかかってしまいます。
10. 物件の引渡し状態
物件の引渡しは、①居抜きか②スケルトンの2パターンがあります。
居抜きの場合には不用品の廃棄処分が思いの外かかったりします。
どちらの状態で引き渡されるかによって工事費は大きく変わってくるので、しっかりと不動産屋に確認しましょう
終わりに
いかがでしたでしょうか。
今回は物件選びの大まかなポイントを10個紹介しました。
今後、各ポイントについて詳しく説明いたしますので、良かったらぜひ読んでみて下さい。
最後までお読み頂きありがとうございました。
参考文献:建築知識2 2022 February No. 807 「世界一美しい小さな飲食店の作り方」